特別審査員 池波志乃さん
幼い日に乗りまくった二十系統の思い出
実家が「駒込坂下町」で、母方の祖母が「神明町」に住んでいたので、子どものころから二十系統に乗りまくってましたね(笑)。おばあちゃんちに行くと、必ず見に行くのが神明町車庫。都電がいっぱい停まっているのを見るのが楽しくて。
初めて一人で乗ったのは「上野広小路」まで。小学校低学年のとき、上野の松坂屋へ何をしに行ったかは覚えていないのに、初めて自分で払った運賃が十五円だったことははっきりと覚えています。
中学生になると、講道館に柔道を習いに行っていたので、「上野広小路」で十六系統に乗り換えて「春日町」まで、毎日都電に乗ってました。「池之端二丁目」を過ぎると、それまで路面を走っていた都電が専用軌道に入るんです。不忍池のほとりをぐるっと「上野公園」まで、その区間が本当に格好よくって大好きでした。池之端二丁目の角にケーキ屋さんがあって、いつも見るそこのパウンドケーキがほしくてほしくて(笑)。そのくらい都電って町と近かったんですよね。
都電は乗り換え簡単 迷わない遅刻しない
都電は道の真ん中に停留場があるから目立つし、遠くからでも走って来るのが見えて、格好よかったですよね。どっちに行くかも軌道を見ればわかるので、乗り換えも簡単。停留場の名前がわからなくても、窓の外の景色を見ていれば間違えず降りられる。うちの父は噺家でしたが、寄席に行くのは絶対都電でした。目の前で乗れるし、小回りがきくし「都電なら絶対遅刻しないんだ」って。
都電の全盛期を知らない若い人にも、今、荒川線が人気みたいですよね。他のエリアにも復活させてほしいな。スカイツリーの近くとか、下町エリアに都電が復活したらすてきだと思いませんか。絶対みんな乗りに行きますよね!
池波さんが「一番好きだった場所!」、上野公園横の専用軌道
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池波 志乃さん
タレント、エッセイスト。1955年、東京都荒川区西日暮里出身。父は10代目金原亭馬生、祖父は5代目古今亭志ん生、叔父は3代目古今亭志ん朝という落語家一家に生まれる。高校を中退し俳優座養成所に入所、1974年女優デビュー。映画、TVドラマを中心に幅広く活躍し、1990年代半ばから演劇活動を休止。現在はタレント、エッセイストとして活躍中。夫は俳優の中尾彬。